2025/09/22(月)必ず受信できるメーリングリストの運用方法(From書換)

メーリングリストの受信トラブルを解決する

メーリングリスト運用、特にsubjectを変更するMLは、「受信できない!」「迷惑メールに入りすぎる!」などのトラブルが発生しがちです。
ML(メーリングリスト)の受信確率を上げるには、以下の運用が一番です。

後半では、メーリングリストでの返信先問題(reply-to)も取り上げます。

SPFを活用する方式

(ML側)
1.SPF設定---------必須
2.ヘッダFROM書換--必須(MLのドメインに書き換える)
3. reply-to:に投稿者とMLの両方をいれるようにする。

これで、SPFはPassします。

4.DMARC設定-------強い推奨(ただし当面はp=none設定)
5.ARC導入---------推奨

MLドメインのDMARCを rejectに設定したとしても、Fromが書き換わっているので、DMARCアライメントもpassしますが、運用当初はnoneで様子をみたほうがよいと思います。
※DMARCアライメントとは、ヘッダFromとSPFで認証されたreturn-path(=最終的に有効なMAIL FROM/envelope-from)が一致していること。

仮に、投稿者のDMARCがrejctに設定されていたとしても、FromがMLドメインに書き換わっているので、DMARCアライメントは関係がなくなります。

DKIMを活用する方式

(ML側)
1. DKIM設定---------必須(MLが配送するメールにDKIMが必要です。)
2. +ヘッダFROM書換--必須(MLのドメインに書き換える)
3. reply-to:に投稿者とMLの両方をいれるようにする。

これでDKIMはpassします。

4. DMARC設定--------強い推奨(ただし当面はp=none設定)
5.ARC導入----------推奨

MLドメインのDMARCを rejectに設定したとしても、Fromが書き換わっているので、DMARCアライメントもpassしますが、運用当初はnoneで様子をみたほうがよいと思います。
仮に、投稿者のDMARCがrejctに設定されていたとしても、FromがMLドメインに書き換わっているので、DMARCアライメントは関係がなくなります。
ARCについて
ARCは、メーリングリスト*1が投稿者からのメールを受信した際のSPF,DKIMの認証情報を、次のサーバー(MTA)に引き継ぐもので、ヘッダに記載されます。
しかし、ARCは有効な仕組みではありますが、完璧ではなく、受信側サーバーが斟酌してくれるのを祈るしかありません。

その点、ヘッダFROM書換は、MLの場合、投稿者からではなく、FROMからの投稿ということになるので、エラーメールとなる確率がぐっと下がります。

さらにDMARCを設定している場合には、DMARCアライメントも通るので、さらにエラーメールとなる確率がぐっと下がります。

さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させるメールセキュリティ覚書(SPF,DKIM,DMARC)を参照。

*1 : 本当はMLに限らない

ヘッダFrom書換による影響

上記のとおり、MLの運用においては、From書換が最強です。

ヘッダFrom書換のデメリットとして、メール受信者のユーザーエクスペリエンスが低下する(Fromヘッダが投稿者ではなくMLドメインとなる)ということが度々指摘されます。
From: taro_nippon@example.jp → mlname@mldomain.jp となるということです。

しかし、これもメールアドレス部分ではなく、「表示名」部分を工夫することで、一定の対応が可能です。

From: 日本太郎<taro_nippon@example.jp> → 日本太郎 via ML<mlname@mldomain.jp> や
From: taro_nippon@example.jp → taro_nippon via ML<mlname@mldomain.jp>

となるということです。※表示名は他にも工夫の余地があります。

MLとはそういうものだ、という認識さえ登録メンバーに意識付けすれば*2、特に混乱はないように考えています。

*2 : そう難しくないはず

MLへの返信が、適切に実施されるための要件

返信時の挙動

一般的なMLでは、reply-toヘッダはMLアドレスが指定されることが多いです(fmlのデフォルトはMLアドレス、Mailmanのデフォルトはreply-toなし)。
すると、以下の問題が生じます。
ML(メーリングリスト)メンバーではない外部アドレスからの投稿の場合、reply-toがMLアドレスだけとなり、そのメールに返信(全員返信含む)すると、MLにしか返信されないので、当該外部の投稿者に返信されない。
これはFrom書換しなくても生じる問題ですが、From書換だけをしても残る問題です。

よって、MLは、reply-to の設定に関し、以下の挙動が望まれるところです(下記A,Bの両方)。
A. MK(メーリングリスト)外部からの投稿に関しては、 reply-to に、①MLのメールアドレスのほか、②当該外部投稿者のメールアドレスの2つをセットする。
B. MK内部(MLの登録メンバー)からの投稿に関しては、reply-to に、①MLのメールアドレスのみをセットする。
Aは、外部投稿者への返信が漏れてしまうことを防ぎます。
Aを内部投稿者にも貫くと、reply-toや宛先にMLメンバーのアドレスが次々と継ぎ足されることとなり、メールの宛先欄が混乱することとなるのでBが必要となります。

この点を改善しようとしたのが、メーリングリスト改善/さくらインターネット/Reply-toヘッダの記事です。

もうひとつのバリュエーションも上記の記事に加えました。
メーリングリストメンバーからの投稿については、reply-toの設定が元メールにあればそれを生かし、なければreply-toに、MLアドレスを設定する。
メンバー以外の外部からの投稿については、reply-toの設定があればそのまま生かし、reply-to設定がなければ、当該外部の方(Fromヘッダにあるアドレス)をreply-toに設定する。

最強のメーリングリスト運用方法

  • ヘッダFrom書換
  • Reply-toヘッダの適切な処理
この2つが必要です。
これを実務記事にしたのが、さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させるの記事です。

ML登録者が気を付けること

  1. MLからのメールを単純転送して、他のドメイン(例:Gmail)で受け取ってはいけません。せっかくのSPFが崩れます。管理者に最終的に受け取るアドレスを登録してもらいましょう。
  2. Gmailに転送したいなら、単純転送ではなく、POP/IMAPアクセスにしましょう。