2025/10/05(日)ビジネスでのメーリングリスト管理 tips-Gmail 転送バウンス問題対応
それでもGmailからバウンスメール(エラーメール)が届いてしまう。。
Gmail、yahoo、ドコモ、AUなどは、受信メールを厳しく選別しています。本サイトに記載あるような、From書換をしても、メンバーが使っているGmailからバウンスメールがML管理者に届く場合があります。
それは、メンバーのメールアドレスからその方が使っているGmailに転送している場合です。
このGmailアドレスが、MLメンバーになっていればこのような事象は発生しません。
MLメンバーになっているのは、その方の外部への公開用メールアドレスで、実際には(MLメンバーではない)Gmailアドレスに転送して運用している場合です。
かつ、Gmail側で、POP取得していない場合です(単純転送を受けている場合)。
このメンバーの転送するサーバーがARC,SRSに対応していればまだ、Gmailがキャッチする確率が上がりますが、転送に対して無対策なサーバーも多くあります。
その対策です。
A) Gmail側でのPOP受信
そのメンバーの方にGmail側でPOP受信してもらう方法です。ただし、この方法には技術上ではなく、ビジネス上の問題があります。
① その人に、技術的指導をしなければならない
② POP受信は、リアルタイム送信に比べGmail到達に時間がかかるので、その人のストレスになる場合がある。
①は、その人に、一定のITリテラシーが必要ですが、ビジネスでは優秀な人も、IT関係はさっぱり知識がないこともあります(だから単純転送しているという背景もあるでしょう)。POP受信って何?みたいな人に指導するのもしんどい場合があるでしょう。
②は、ビジネスのレスポンスにもろに影響してきます。GmailはPOP受信の間隔は、その人のメール到達量などから自動調節し、その人がメールを受ける量が多い時間帯は細かく受信し、そうでもない時間は間隔をあけているようです。なので、どうしても、Gmailへの到達が単純な転送受けに比して遅くなります。
ビジネス上、クイックレスポンスが求められている場合には致命傷になりかず、そうなる指導をメンバーにしてよいか、というビジネスジャッジも必要となります。
もちろん、GmailのPOP受信も 設定画面から「今すぐ受信する」を選択すればGmailのフェッチ間隔にとらわれずPOP受信することは可能ですが、そもそもITリテラシーが低いかもしれない人にそれを望むのは酷というものです。
IT的な正解が、ビジネス的な正解とは限らないということです。
B) その受信者が使っている転送サーバーのIPアドレスをMLドメインのSPFに加える
バウンスメールを分析すれば(AIが分析してくれます)、その人が使っている転送サーバーのIPアドレスを知ることができます。そのIPアドレスをMLドメインのSPFに加えてしまう方法です。
こうすれば、当該転送サーバーIPアドレスは、MLドメインにとっての正当な発信者とみなされるので、SPFはpassします。
そして、FromアドレスをMLアドレスになるようにしておければ、DMARCのSPFアライメントもpass します。
この方式の欠点は、MLドメインのSPFに記載するIPアドレスが多くなり、あとで見返した時に、「あれっ、このIPアドレスって何のプロジェクトの時のやつだっけ?」ということになりがちなので、きちんとSPFに記載するIPアドレスを管理しておく必要があります。当該プロジェクトが終了したら、今回のIPアドレスはSPFから忘れずにはずように気を付ける必要があります。
メリットは、その転送者(受信者-MLメンバー)に、技術的指導を一切する必要がないということです。
管理者側の作業で完結するので、受信者側の手を煩わせる必要はありません。
A,B選択は状況次第
A式か、B式かはどちらかを対策すれば大丈夫ですので、総合的に判断しましょう2025/10/05(日)Gmailにも届くメーリングリスト-さくらインターネット
簡便法、Gmailにも届くさくらインターネットのメーリングリストの改良スクリプト
さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させる で紹介したスクリプトは複雑で怖い、という方向け、最小限のFrom書換&replt-to 書換スクリプトです。スクリプトの組み込み方法は、fmlにスクリプトを組み込む方法 をご参照ください。
# YOU CAN EDIT MANUALLY AFTER HERE. $START_HOOK = q{ # Reply-To header processing { my $rt = &GET_HEADER_FIELD_VALUE('reply-to'); $rt = '' unless defined $rt; if (&MailListMemberP($From_address)) { unless (length $rt) { &DEFINE_FIELD_FORCED("reply-to", $MAIL_LIST); } } else { if (length $rt) { &DEFINE_FIELD_FORCED("reply-to", $rt . "," . $MAIL_LIST); } else { my $fa = defined($From_address) ? $From_address : ''; &DEFINE_FIELD_FORCED("reply-to", $fa . "," . $MAIL_LIST); } } } # From header rewrite ("<name> via ML:" <MAIL_LIST>) { # 1) read original From safely my $orig_from = &GET_HEADER_FIELD_VALUE('from'); $orig_from = '' unless defined $orig_from; # 2) keep original From for troubleshooting if (length $orig_from) { &DEFINE_FIELD_FORCED('x-original-from', $orig_from); } # 3) extract display-name robustly (no warnings even if patterns don't match) my $name = ''; if ($orig_from =~ /^\s*"([^"]+)"\s*<[^>]+>/) { $name = $1; } elsif ($orig_from =~ /^\s*([^<]+?)\s*<[^>]+>/) { $name = $1; } elsif ($orig_from =~ /<([^>]+)>/) { my $addr = $1; ($name) = split(/\@/, $addr, 2); } elsif ($orig_from =~ /([^\s\@]+@[^\s\@]+)/) { my $addr = $1; ($name) = split(/\@/, $addr, 2); } # 4) trim; fallback if empty/undef $name = '' unless defined $name; $name =~ s/^\s+|\s+$//g if length $name; $name = 'No Name' unless length $name; # 5) build new From with " via ML:" suffix my $disp = $name . '_via_ML:'; # 6) ensure MAIL_LIST is defined my $ml = defined($MAIL_LIST) ? $MAIL_LIST : ''; # 7) create new From header with quotes my $new_from = $disp . ' <' . $ml . '>'; # 8) set rewritten From only when ML address is available if (length $ml) { &DEFINE_FIELD_FORCED('from', $new_from); } } }; <||
2025/10/04(土)Gmailにも届く、完璧なメーリングリスト(ML)の作り方(特にビジネス)
メーリングリストは生きている
「ファックス」はいずれなくなるといわれつづけ、しかし一部では現役で使われています。ML(メーリングリスト)も、Slackなどの導入で不要になる、と言われ続け、しかしまだ現役で使われています。
一方で、需要減に対応してか、各レンタルサーバー会社では、MLの機能提供がなおざりになっている状況もみてとっています。
そこでここでは、さくらインターネットを例にとって、メーリングリスをより使いやすくするための技術的tipsをご紹介します。
この記事は、レンタルサーバーでメーリングリストを運用しており、メールが届かない・迷惑メール扱いされるといった問題に悩む技術担当者向けです。
現状のメーリングリストの問題点
運用上の問題点 reply-to
メーリングリスト+Ccで他のアドレス(MLメンバーではないアドレス)がある場合、通常、「全員返信で返信します」。ところが、多くのメーリングリストサービスは、reply-to ヘッダが、MLアドレスまたはFromアドレスの二択(あるいはどちらか一択)の場合がほとんどです。
しかし、実務ではこんな問題が起きます。
あるメール
To: ml<mladress@example.com>Aさん、BさんはMLの登録メンバーではありません。
From: Aさん<a-san@example.com>
Reply-to: ml<mladress@example.com>
Cc: Bさん<b-san@example.com>
これに全員返信すると、
To: ml<mladress@example.com>となり、肝心のAさんが宛先から抜けてしまう!のです。
Cc: Bさん<b-san@example.com>
しかし、返信した人は「全員返信」しているつもりなので、Aさんにも届いていると誤解したままコミュニケーションミスが発生する、ということがビジネスの現場でたまにみられます。
では、常にreply-to を、投稿者(Fromのアドレス)にしてしまうとどうでしょう。
To: ml<mladress@example.com>これに全員返信すると、
From: Aさん<a-san@example.com>
Reply-to: Aさん<a-san@example.com>
Cc: Bさん<b-san@example.com>
Tp: Aさん<a-san@example.com>となり、きちんと全員返信の目的を達成できます。
To: ml<mladress@example.com> ※Ccとなるメーラーもある
Cc: Bさん<b-san@example.com>
ところが、これも問題があります。
仮に、Aさんが登録メンバーだったらどうなるでしょうか。
全員返信すると結果は同じですが
Tp: Aさん<a-san@example.com>Aさんには、同じ内容のメールが2通届きます。
To: ml<mladress@example.com> ※Ccとなるメーラーもある
Cc: Bさん<b-san@example.com>
また、このようなやりとりを他のMLメンバーも参加してお互いに投稿すると、toやcc にMLメンバーのアドレスがどんどん追加されて、宛先欄が汚れるだけではなく、余分なメールが行き交うようになります。
そこで以下のように解決すべきと考えています。
① Fromが、MLメンバーの場合には、reply-to はMLアドレスで問題ない。これで、上記の不具合は解決します。※解決策は下記にて。
② Fromが、MLメンバーではない場合には、reply-to は、FromアドレスとMLアドレスを加える*1。
③ ただし、元のメールにreply-to の設定がある場合には、それのみを生かす。
※google-groups も似たような挙動をします。
受信できない問題
昨今、迷惑メール対策として、いわゆるFrom偽装や、内容改変のあるメール、転送メールに対して、受信サーバーが強硬な姿勢で、メールの受信拒否をしています。Gmailが筆頭で、yahooメールは、通信会社関係も強きの受信拒否をしています。
そうすると、MLメールが受信拒否されたり、あるいは、受信できても迷惑メールに振り分けやすくなります。
ビジネスではメールを受信できていない(+迷惑メールになりやすい)、というのは致命傷ですので、なんとかする必要があります。
そこで、①受信サーバーに受信されやすくする、②受信後、迷惑メールに分類されにくくする、と問題にわけて、それぞれの方策が必要となります。
MLは、いったんMLが運用されているサーバーが受信したうえで、A:必要な加工をして、再度、B:MLサーバーが各登録メンバーに送信する作りになっています。
転送はメールをそのまま“通過”させますが、MLは“再送信”する点が、メール転送とMLの違いです*2。
Aの問題
通常、Subject(件名)を書き換えます。[ml-No:0001]みたいな番号をSubject(件名)の先頭につけます。最近はDKIMという仕組みがほぼ必須となっているのですが、このように重要ヘッダであるSubjectヘッダを書き換えると、DKIM=fail となり、内容改変メールと判定されます。
すると、上記①②の問題が発生しやすくなります。
DKIMが壊れているので、当然にDMARCのDKIMアライメントもfailとなります。
※DKIMアライメントとは、DKIMで署名に使われたドメインとFromのドメインの一致(alignment)を確認することです。
DKIMなどの仕組みは、メールセキュリティ覚書(SPF,DKIM,DMARC)を参照してください。
Bの問題
SPFという正当な送信サーバーから送信されているか、をチェックする仕組みがあります。具体的には、SMTPコマンドMAIL FROM(エンベロープFrom→Return-path:)と、送信サーバーのIPアドレスを取得し、それがMAIL FROMのドメインに設定されているSPF情報と整合性があるかを検証します。
多くのMLサーバーは、自身でMAIL FROMを投稿者ではなく、自らのMLドメインに変更するので、MLドメインでのSPF は pass (成功)します。
正当なサーバーからの送信として解釈されることとなります。
ところが最近は、DMARCというFrom偽装を防ぐ仕組みであり、このMAIL FROM(エンベロープFrom→Return-path:)とヘッダーFromドメインを一致を確認し、それがfailだと、DMARC もfailします。
この場合でも、DKIMが通っていて、DMARCのDKIMアライメントが通っていればいいのですが、上記のとおりDKIMは壊れているので、DMARC も fail します。
すると、このメールはFrom偽装のなりすましメールだということとなり、受信拒否されやすくとなります。
技術的な表現
内容改変によって、DKIMが壊れるので、MLが再度、自身のドメインでDKIM署名しないとDKIMは通りません。ARCによって、一定の信頼チェーンは作れますが、これをどう解釈するかは受信側に委ねられており、完全な対応ではありません(もちろんARCはあったほうがよい)。
すると、DKIMが壊れている以上、DMARCのDKIMアライメント(署名ドメインとFromドメインの一致)も fail します。
同様に、SPFがpassしても、DMARCのSPFアライメントが通りません。
受信できない問題の解決策
現実的な解決策として以下が考えられます。FromをMLアドレスとすることで、DMARCのSPFアライメントを成功させ、DMARC pass とする。DMARCを pass するので、受信確率がぐっと上がります。
ただし、このFromアドレスの変更をするには、ビジネス上の留意点があります。
それは、Fromの表示名、です。
このFromの表示名まで、MLの名前が表示されるようになると、誰からのメールかについてすぐにわからない(本文読まないとわからない)、ということになるのです。
実際の投稿者は、
From: Aさん <a-san@example.com>なのに
From: tips456のML <ml@tips.net>みたいになるのです。これでは困ります(エックスサーバーはこの仕様なのでビジネスで使いづらい。)。
そこで解決策は、
- Fromのアドレスは、MLアドレスであるが
- Fromの表示名は、投稿者の名前
さらに発展形としては、
- Fromのアドレスは、MLアドレスであるが
- Fromの表示名は、"投稿者の名前_via_ML"
Fromヘッダは以下のようになります。
From: "投稿者の名前_via_ML" <ml@tips.net>また技術上は、例えば X-Original-From として
X-Original-From: (投稿者の表示名とメールアドレス)というぐあいに、投稿者の投稿時のFromを残しておくことは有用です。
MLサーバーでDKIMを再署名できないの?
理論上はできると思いますが、さくらインターネットで試みたところ、できませんでした*3。おそらくMLはARC対応で十分と考えているのでしょう。
もし、MLがDKIM再署名しているサーバー等をご存じの方は教えてください。
追記:
google-groups は、MLサーバーで再署名しています。さすがですね。
さくらインターネットではなぜできないのか、くやしいの~。
整理
これまでの議論で、以下のことをすれば、ビジネス上も実務に耐えるメーリングリスト運用ができることとなります。- Fromヘッダについて、アドレスはML、表示名は投稿者+via_MLに変換することで、受信確率を上げて(ほぼ大丈夫)、迷惑メールに分類させる確率を下げる(メールの内容次第)。
- Reply-toは、投稿者がMLメンバーかどうかによって、投稿者のアドレスをいれるかどうか振り分ける
さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させる
という記事を投稿しております。これでばっちりです。
ただし、これを メーリングリストプログラムのfmlに組み込むのは、ほんのちょっと、サーバー管理の知識が必要です。しかし、怖がるほどのものではないと思いますので、頑張って設定してみましょう。一度やればあとは簡単です。
どのサービス(レンタルサーバー)を使用するか
私は、さくらインターネットを長く使っており、このレンタルサーバーの議論しかできません*4。最近、縁あってエックスサーバーを触る機会があったのですが、ユーザーの自由度が低く、上記の設定が(たぶん)できないので*5、オススメできません。
追加的施策
不要なヘッダの削除
どうせfailするDKIMヘッダなどをMLサーバーが削除しておければ、受信側のネガティブ要素を無くすことができます。ただし、この措置はかえって偽装メールと判断されかねない要素なので、必須ではないと考えています。
いずれこの点も記載したいと思います。
その他
こちらのサイト https://mekiku.com/view.php?a=89 は、簡潔な方法で解決されています。エレガントでいいですね。これでもいいと思います。ただし、Fromの表示は単に投稿者のFromをそのまま流用しているだけとなります。
この場合、投稿者からの送信かML経由が一目ではわからないので、当サイトでは、_via_ML を付ける方法をご紹介しています。マルチバイトに対応するために、MINEデコード、エンコードもしていますので、スクリプトが長くなっています。
まとめ:ビジネスMLの完璧運用を今すぐ実現
メーリングリスト(ML)は、非同期コミュニケーションの強力なツールですが、DMARC/SPF/DKIMの認証失敗による受信トラブルが最大の敵です。これを解決する鍵は以下の3ステップ:- Fromヘッダの書き換え:MLアドレスをFromに設定し、表示名で「投稿者_via_ML」と明記。SPFアライメントを確保し、配信率を劇的に向上。
- reply-toのスマート設定:投稿者がMLメンバーならMLアドレス、非メンバーならFrom+MLの組み合わせに。Reply Allの混乱を防ぎ、コミュニケーションをスムーズに。
- さくらインターネット活用:DKIM再署名不可の制約をFrom書き換えでカバーし、ARCで信頼性を補強。Xserverのような柔軟性の低いサービスは避けましょう。
これらを実装すれば、ビジネスMLはスパム判定を回避し、確実に届く「完璧なツール」へ。fmlなどのMLソフトに組み込む際は、テスト運用からスタートを。あなたのチームの生産性を高める一手、ぜひ試してみてください!
2025/09/22(月)必ず受信できるメーリングリストの運用方法(From書換)
メーリングリストの受信トラブルを解決する
メーリングリスト運用、特にsubjectを変更するMLは、「受信できない!」「迷惑メールに入りすぎる!」などのトラブルが発生しがちです。ML(メーリングリスト)の受信確率を上げるには、以下の運用が一番です。
後半では、メーリングリストでの返信先問題(reply-to)も取り上げます。
SPFを活用する方式
(ML側)1.SPF設定---------必須
2.ヘッダFROM書換--必須(MLのドメインに書き換える)
3. reply-to:に投稿者とMLの両方をいれるようにする。
これで、SPFはPassします。
4.DMARC設定-------強い推奨(ただし当面はp=none設定)
5.ARC導入---------推奨
MLドメインのDMARCを rejectに設定したとしても、Fromが書き換わっているので、DMARCアライメントもpassしますが、運用当初はnoneで様子をみたほうがよいと思います。
※DMARCアライメントとは、ヘッダFromとSPFで認証されたreturn-path(=最終的に有効なMAIL FROM/envelope-from)が一致していること。
仮に、投稿者のDMARCがrejctに設定されていたとしても、FromがMLドメインに書き換わっているので、DMARCアライメントは関係がなくなります。
DKIMを活用する方式
(ML側)1. DKIM設定---------必須(MLが配送するメールにDKIMが必要です。)
2. +ヘッダFROM書換--必須(MLのドメインに書き換える)
3. reply-to:に投稿者とMLの両方をいれるようにする。
これでDKIMはpassします。
4. DMARC設定--------強い推奨(ただし当面はp=none設定)
5.ARC導入----------推奨
MLドメインのDMARCを rejectに設定したとしても、Fromが書き換わっているので、DMARCアライメントもpassしますが、運用当初はnoneで様子をみたほうがよいと思います。
仮に、投稿者のDMARCがrejctに設定されていたとしても、FromがMLドメインに書き換わっているので、DMARCアライメントは関係がなくなります。
ARCについて
ARCは、メーリングリスト*1が投稿者からのメールを受信した際のSPF,DKIMの認証情報を、次のサーバー(MTA)に引き継ぐもので、ヘッダに記載されます。しかし、ARCは有効な仕組みではありますが、完璧ではなく、受信側サーバーが斟酌してくれるのを祈るしかありません。
その点、ヘッダFROM書換は、MLの場合、投稿者からではなく、FROMからの投稿ということになるので、エラーメールとなる確率がぐっと下がります。
さらにDMARCを設定している場合には、DMARCアライメントも通るので、さらにエラーメールとなる確率がぐっと下がります。
さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させる・メールセキュリティ覚書(SPF,DKIM,DMARC)を参照。
ヘッダFrom書換による影響
上記のとおり、MLの運用においては、From書換が最強です。ヘッダFrom書換のデメリットとして、メール受信者のユーザーエクスペリエンスが低下する(Fromヘッダが投稿者ではなくMLドメインとなる)ということが度々指摘されます。
From: taro_nippon@example.jp → mlname@mldomain.jp となるということです。
しかし、これもメールアドレス部分ではなく、「表示名」部分を工夫することで、一定の対応が可能です。
From: 日本太郎<taro_nippon@example.jp> → 日本太郎 via ML<mlname@mldomain.jp> や
From: taro_nippon@example.jp → taro_nippon via ML<mlname@mldomain.jp>
となるということです。※表示名は他にも工夫の余地があります。
MLとはそういうものだ、という認識さえ登録メンバーに意識付けすれば*2、特に混乱はないように考えています。
MLへの返信が、適切に実施されるための要件
返信時の挙動
一般的なMLでは、reply-toヘッダはMLアドレスが指定されることが多いです(fmlのデフォルトはMLアドレス、Mailmanのデフォルトはreply-toなし)。すると、以下の問題が生じます。
ML(メーリングリスト)メンバーではない外部アドレスからの投稿の場合、reply-toがMLアドレスだけとなり、そのメールに返信(全員返信含む)すると、MLにしか返信されないので、当該外部の投稿者に返信されない。これはFrom書換しなくても生じる問題ですが、From書換だけをしても残る問題です。
よって、MLは、reply-to の設定に関し、以下の挙動が望まれるところです(下記A,Bの両方)。
A. MK(メーリングリスト)外部からの投稿に関しては、 reply-to に、①MLのメールアドレスのほか、②当該外部投稿者のメールアドレスの2つをセットする。Aは、外部投稿者への返信が漏れてしまうことを防ぎます。
B. MK内部(MLの登録メンバー)からの投稿に関しては、reply-to に、①MLのメールアドレスのみをセットする。
Aを内部投稿者にも貫くと、reply-toや宛先にMLメンバーのアドレスが次々と継ぎ足されることとなり、メールの宛先欄が混乱することとなるのでBが必要となります。
この点を改善しようとしたのが、メーリングリスト改善/さくらインターネット/Reply-toヘッダの記事です。
もうひとつのバリュエーションも上記の記事に加えました。
メーリングリストメンバーからの投稿については、reply-toの設定が元メールにあればそれを生かし、なければreply-toに、MLアドレスを設定する。
メンバー以外の外部からの投稿については、reply-toの設定があればそのまま生かし、reply-to設定がなければ、当該外部の方(Fromヘッダにあるアドレス)をreply-toに設定する。
最強のメーリングリスト運用方法
- ヘッダFrom書換
- Reply-toヘッダの適切な処理
これを実務記事にしたのが、さくらインターネットMLでFromを書き換えてSPFalignmentを成功させるの記事です。
ML登録者が気を付けること
- MLからのメールを単純転送して、他のドメイン(例:Gmail)で受け取ってはいけません。せっかくのSPFが崩れます。管理者に最終的に受け取るアドレスを登録してもらいましょう。
- Gmailに転送したいなら、単純転送ではなく、POP/IMAPアクセスにしましょう。