antiX Linuxの起動方式とデスクトップ環境の選択ガイド
2025/11/02
antiX Linuxの起動方式とデスクトップ環境の選択ガイド
はじめに - 選択肢の豊富さと迷い
antiX Linuxをインストールしようとすると、まず驚かされるのがその選択肢の多さです。起動方式(init system)だけでも2つあり、さらにデスクトップ環境の組み合わせを考えると、最低でも24種類の構成が可能です。この豊富な選択肢は、一見すると初心者を混乱させるかもしれません。
しかし、ユーザーに選択の自由を与え、それぞれのニーズに最適化された環境を構築できる、これがantiXの大きな魅力となっているそうです。
本記事では、antiXの起動方式とデスクトップ環境について、その背景から具体的な選択基準を解説します。
起動方式
sysVinitとrunitの2種類があります。stsVintiが古い方式だけど、逐次起動なのでわかりやすいが、各プロセスの監視はゆるゆるです。
runitは並列起動、かつ、各プロセスコントロールをsysVint より細かくします。
さらにsysytemDという中央集権的なシステムが最近は主流ですが、これはantiXではあえて採用していません。重くなる、ということだと理解しています。
antiXでのGUIの種類の表し方
GUIを実現するためには、WM(=Window Manager)というグラフィカルな窓(ウィンドウ)をコントロールする仕組みと、FM(File Manager)という、いわゆるファイラーとデスクトップ画面でのアイコン配置をコントロールする仕組みが組み合わさっています。WMもFMも種類があるので、その掛け合わせです。
antiXでは、WM3種類、FM4種類となります。FMはFMなし、という選択肢も1種類として数えています。これで12種類あることとなります。
選び方
というわけで、起動方式2種類×WM3種類×FM4種類=24種類あることとなりますが、sysVint か runit のどちらにするか、をまず決める必要があります。WM3種類×FM4種類 については、インストールしてから選択できます。
でも
起動方式2種類は、そもそもインストールファイル(ISOイメージ)が異なりますので、マルチブート環境でない限り、どちらか1つを最初に決めてインストールする必要があるからです。
sysVint か runit か
インストールファイルが異なるため、インストール前に決定する必要があります。sytemdはantiXにはないので、比較のための参考用です。比較
| 項目 | sysVinit | runit | systemd |
|---|---|---|---|
| 設計年代 | 1980年代(System V) | 2004年 | 2010年 |
| 設計思想 | シンプル・逐次処理 | 軽量・プロセス監視重視 | 統合・並列処理 |
| スクリプト言語 | シェルスクリプト | シェルスクリプト | 独自ユニットファイル |
| 起動方式 | 逐次(順番に一つずつ) | 並列可能 | 並列 |
| プロセス監視 | なし(起動のみ) | 常時監視・自動再起動 | 常時監視・自動再起動 |
| 依存関係管理 | 手動(スクリプト内) | 簡易的 | 高度な依存関係グラフ |
| ログ管理 | syslog等に依存 | svlogd(シンプル) | journald(統合) |
| 学習難易度 | 易しい | 中程度 | 難しい |
| メモリ使用量 | 最小 | 小 | 中~大 |
| 項目 | sysVinit | runit | systemd |
| 起動速度 | 遅い(逐次処理) | 中程度~速い | 速い(並列処理) |
| メモリ使用(init本体) | 1-2MB程度 | 2-3MB程度 | 5-10MB以上 |
| 監視プロセス | なし | サービスごと | 統合管理 |
| 総合的リソース | 最軽量 | 軽量 | 中~重量 |
| ディスク使用量 | 最小 | 小 | 大 |
- antiXでの選択基準
runitを選ぶべき場合 ・常用環境として長期間安定稼働させたい ・サーバー的用途(メールサーバー、Webサーバーなど) ・RDP等のサービスを常時起動させる ・プロセスの自動再起動が必要 ・最新のLinux技術を学びたい sysVinitを選ぶべき場合 ・Linuxの基礎をじっくり学習したい ・極限まで軽量化したい ・シンプルさを最優先 ・カスタマイズを細かく制御したい ・トラブルシューティングを学びたい ・学習重視ならsysVinit … 起動の仕組みを一つ一つ追いかけられる ・実用重視ならrunit … RDPクライアントの安定稼働、プロセス監視の恩恵
ただし、linuxをすでにバリバリに使い来ないしている方は、sysVintでいいと思います。
AIと逆の発想ですが、バリバリの方は、sysVintを自分なりに活用してantiXの特徴である「軽さ」「シンプルさ」を堪能できると思います。
一方で、runitは私のようにlinux初心者が最新のsysytemdに繋がる知識を得て、トラブルや面倒さも若干あるけれど、勉強になるし、実用にも十分耐えうる、と思います。
そして、もっとシンプルなのがいいや、となれば、sysVintに移行してもよいと思います。
ということで私は runit を選択しました。(一番最初はあまり考えずsysVintをインストールしたのですが、runitにすぐにかえました)。
WMとFMの組み合わせ--WMの部(ウィンドウマネージャー)
インストール後に簡単に変更できます。WMの種類
| 項目 | JWM | Fluxbox | IceWM |
|---|---|---|---|
| 実装言語 | C | C++ | C++ |
| メモリ使用量(起動時:AI調査) | 3-5MB | 8-15MB | 10-20MB |
| 起動速度 | 1秒未満 | 1-2秒 | 1-2秒 |
| 設定ファイル形式 | XML(単一) | テキスト(複数) | テキスト(複数) |
| 設定方式 | XML(直接編集) | テキスト(柔軟だが複雑) | INI形式(わかりやすい) |
| タスクバー内蔵 | ○ | ×(別途必要) | ○ |
| システムトレイ内蔵 | ○ | × | ○ |
| メニュー生成 | 自動/手動 | 手動/スクリプト | 自動/手動 |
| タブ機能 | × | ○(高機能) | × |
| テーマ対応 | △(基本的) | ○(豊富) | ○(豊富) |
| Windows風UI | △ | × | ○ |
| 依存ライブラリ | 最小 | 中程度 | 中程度 |
| 日本語表示 | ○ | ○ | ○ |
| キーバインド柔軟性 | 中 | 高 | 高 |
| ワークスペース管理 | 基本的 | 高機能 | 高機能 |
| 透過効果 | × | ○ | △(限定的) |
| 最小動作メモリ | 16MB | 32MB | 32MB |
| CPU負荷 | 最低 | 低 | 低 |
| 設定の学習コスト | 低 | 中~高 | 中 |
| 開発の活発度 | 低~中 | 中 | 高 |
| 評 | 古いPCでも快適。 | 玄人向き。 | antiX標準。Windowsに似たGUI操作がわかりやすい。 |
メモリ効率の詳細
- JWM(3-5MB)
- Fluxbox(8-15MB)
- IceWM(10-20MB)
実環境でのメモリ使用量目安
典型的な使用時(ターミナル2つ、ブラウザ1つ起動):JWM環境: 全体で150-200MB
Fluxbox環境: 全体で180-250MB
IceWM環境: 全体で200-280MB
この差は、メモリが256MB以下の環境では決定的な違いになります。JWMなら快適に動作する環境でも、IceWMでは若干のもたつきを感じる可能性があります。
古いPCの再生や、VPSでのGUI環境構築など、メモリが貴重な環境ではJWMの選択が最も合理的です。一方、1GB以上のメモリがある現代的な環境では、この差はほとんど体感できないため、機能性や使い勝手で選ぶのが良いでしょう。
メモリ容量別の推奨:
128MB以下: JWM一択256MB-512MB: JWMまたはIceWM(用途による)
512MB以上: どれでも快適、機能で選択
用途別の推奨:
サーバー管理用の最小環境: JWMWindows代替デスクトップ: IceWM
開発環境・パワーユーザー: Fluxbox
古いノートPCの再生: JWM
日常使いのデスクトップ: IceWM
antiXでの実際の使用感では、IceWMはzzz-IceWMの組み合わせで使いやすく、Windows的な操作性とLinuxの軽快さを両立できています。JWMは本当に軽く、メモリ使用量を気にする場合の第一選択です。Fluxboxは設定に時間をかけられる場合に、最も自分好みの環境を構築できるとされています。
WMとFMの組み合わせ--FMの部(ファイルマネージャー)
| 項目 | 無印(CLI) | Minimal系 | ROX-Filer | zzzFM(旧SpaceFM) |
|---|---|---|---|---|
| メモリ使用量(AI調査) | 0-5MB | 約10-20MB | 約15-25MB | 約20-35MB |
| 起動速度 | 即座 | 非常に高速 | 非常に高速 | 高速 |
| GUI/CUI | CUI | GUI | GUI | GUI |
| 依存関係 | coreutils、bashのみ | GTK+2/3、最小限 | GTK+2、最小限の依存 | GTK+2/3、udev対応 |
| 特徴 | 一見GUIにみえるがCUI相当 | シンプルな機能、基本的なファイル操作のみ | ドラッグ&ドロップ対応 | ドラッグ&ドロップ対応 |
| 適用シーン | サーバー環境、上級者、自動化処理 | LXDE環境、リソース制限環境 | 軽量デスクトップ環境 | 一般ユーザー、カスタマイズOK |
| CPU使用率 | ほぼゼロ | 最低(1-2%) | 低(1-3%) | 低〜中(2-5%) |
| ディスク容量 | 0MB(既存ツール) | 約1-2MB | 約2-3MB | 約5-8MB |
| デスクトップアイコン配置 | 非対応 | PCManFMを使って対応 | 対応(Pinboard機能) | 対応(--desktop オプション) |
| マウス操作 | 非対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| ネットワークドライブ | mount経由で対応 | 基本対応 | 基本対応 | 拡張対応 |
| ファイルプレビュー | 別ツール必要 | アイコンのみ | アイコンのみ | サムネイル対応 |
メモリの心配がないレベルであれば、zzzFM(旧SpaceFM)、なるべく軽い方がいいならROXです。
ただし、ROXは、ディレクトリのファイル/ディレクトリ数によってウィンドウの大きさを勝手に動かすので、私はストレスがありました。