クリップボード履歴-antiX-linux

2025/11/03
antix にはデフォルトで、clipit というクリップボード履歴ソフトがインストールされていますが、機能が限定的です。
copyQというフリーウエアのクリップボード履歴ソフトのほうが使いやすいので、インストールしてみましょう。

インストール
sudo apt update
sudo apt install copyq

# IceWMのstartupファイルを編集
nano ~/.desktop-session/startup

# 以下の行を追加
copyq &
これで再起動しましょう。

LinuxとWindowsのクリップボード挙動の違い

LinuxとWindowsのクリップボードの挙動の違いを理解しておくといいです。

Windowsの感覚でLinuxを操作すると、特に戸惑いやすいのが「コピーしたはずなのにペーストできない」「FIFOのように感じる」といった現象があります。
Linux(正確にはX Window System)が持つ**複数のクリップボード(セレクション)**の仕組みに起因しています。

Windowsのクリップボードは基本的に「1種類」です。`Ctrl+C`(または「コピー」)でデータが格納され、`Ctrl+V`(または「貼り付け」)でそれを取り出します。常に「最後にコピーした1つのもの」だけが保持されます(履歴機能は別として)。

一方、LinuxのGUI環境(X Window System)では、主に2種類のクリップボード(セレクションと呼ばれます)が並行して動作しており、混乱しがちです。

+2種類のクリップボード(セレクション)**

項目PRIMARY (プライマリ)CLIPBOARD (クリップボード)
概要選択即コピー明示的コピー
コピー操作テキストをマウスで選択(反転)した**だけ**で、自動的に格納されます。`Ctrl+C` キーや、メニューから「コピー」を明示的に実行した時に格納されます。
ペースト操作マウスの**中ボタンクリック**で貼り付けられます。`Ctrl+V` キーや、メニューから「貼り付け」を実行した時に貼り付けられます。
Windowsとの対応なし(Linux/Unix特有の文化)Windowsのクリップボードとほぼ同じものです。

+なぜ「FIFO」や「意図しない貼り付け」が起きるのか**

この2つのバッファは**別々に内容を保持しています**。

たとえば、以下の操作をしたとします。
1. ブラウザで「A」というテキストを `Ctrl+C` でコピーします。(`CLIPBOARD` に "A" が入る)
2. 次に、ターミナルで「B」というテキストをマウスで**選択だけ**します。(`PRIMARY` に "B" が入る)

この時点で、`CLIPBOARD` には "A" が、`PRIMARY` には "B" が入っています。
  1. この状態で...
  2. `Ctrl+V` を押すと: `CLIPBOARD` の内容である "A" が貼り付けられます。
  3. マウスの中ボタンをクリックすると: `PRIMARY` の内容である "B" が貼り付けられます。
ユーザーが「最後に操作したのは "B" の選択だから "B" がペーストされるはず」と思って `Ctrl+V` を押すと、古い "A" が出てきてしまい、「FIFOのようだ」「コピーしたはずのBがペーストできない」と感じることになります。
あるいは、無意識に中ボタンをクリックしてしまい、意図しない `PRIMARY` の内容(直前にたまたま選択していたテキスト)が貼り付けられることもあります。

+「プロパティの値」がコピーできない件について**

これはクリップボードの仕組みの問題ではなく、**アプリケーション(GUIツールキット)側の実装の違い**です。
  1. WindowsのUIは、ダイアログボックス内の「プロパティ値」のような静的なテキストラベルでも、比較的コピー操作を許容するように作られていることが多いです。
  2. Linuxのアプリケーション(特にantiXで使われるような軽量なGTK+やQt以外のツールキット)では、それらの値が「単なる表示ラベル」として扱われ、テキストとして選択・コピーする機能が実装されていない場合があります。
これはデスクトップ環境や使用するアプリケーションの設計思想によるもので、Linuxだから一律でコピーできない、というわけではありません(GNOMEやKDEの標準アプリではコピーできることも多いです)。